書の味わい
小山 美有奈
包装された切り身やお鮨のネタは、現代において記号化された魚の一様態かもしれない。
様々な種類の魚の形態、皮や身の色や手触り血合い、匂いや味は、日々の食材として記憶に蓄積される情報である。
本作品はそれらの記号を本の装丁に擬態させたらどうなるか、という試みである。ぬめりのあるヒラメ、どす黒い血合いの荒々しい表情のカツオ、白さの際立つイカ、銀色にきらめく細長いサンマなど、見た目だけなくそれぞれの装丁のテクスチャから体感できる。本と魚の驚くべき親和性が見事に示されていることに驚く。