キミのスレスレ
大石麻紀子
卵の「黄身」を人間の身体のメタファとして用い、環境へのアフォーダブルな視点を喚起する作品である。黄身は柔らかく可変性に富んだ物体である。粘性の高い液体が薄く強靭な皮膜で覆われている。これを斜面から滑らせたり、落としたり、四角い箱に収めたり、糸をくぐらせて持ち上げたり、平面を押し付けたりと、多様な圧力やストレスを加えてみせる。それに応え適応していく黄身の姿に、宇宙の摂理の中で生を繋いで生る人間の健気な存在を写し出している。キミは「黄身」であるとともに「君」でもあるのだ。
基礎デザイン学科教授 原 研哉