Ex-formation TOKYO
東京小紋
鈴木 萌乃
東京小紋を江戸小紋と対照させることでTOKYOを表現した。江戸小紋は、テキスタイルに表現されたグラフィックパターンであるが、これは単なる幾何学的反復パターンではなく、日常の風物が抽象される眼の巧みさとでも言うか、パターンに見立てられ、昇華される手際の「粋」がポイントである。鈴木萌乃の「東京小紋」への着眼点もそこにある。つまり、現代の東京の文物をモチーフとしてグラフィカルにパターン化するのではなく、モチーフの選定や、それを柄として成就させる際の同時代的な「感性」を、江戸の「粋」と共振させながら、江戸から受け継ぐ文化の遺伝子あるいは、感覚の連繋を確認したかったのではないかと思うのである。
今日の東京の若者の感覚の中にある「伝統」は、電波アイコンや東京タワー、点字ブロックやフェンスの金網を紋様に見立てていく感覚の中にも息づいている。それ故に、風呂式の上で美しい柄として成就することができるのである。
(担当教員 原研哉)