基礎デザイン学科

science of design

Ex-formation 空気
膨らみを着る
大貫 茜

この衣服は「膨らみを着る」という着想で制作されました。ビニール製の透明な膜の中に空気が詰め込まれます。衣服のかたちは人間の裸の身体が表現されていて、乳首やへその位置に、空気を出し入れする通気口が配されている点は面白い工夫です。空気を入れると、身体の膨らみのようなボリューム感のある衣服が出来ます。これを着用すると、衣服を着ているにもかかわらず、そこに裸の身体が表現されるというパラドキシカルな状況が生まれます。透明感のある空気の衣服ならではの仕組みが面白いファッション性を生み出しています。水着の上に着ても、普通の衣服の上に着ても、楽しめそうです。
(担当教員 原研哉)

SOCKS
金澤 悠夏

ソックスというテーマで卒業制作をやってみたいといわれたときには、既に面白そうなテーマであると感じていた。
最初に黒板消しをモチーフにした靴下を持って来て、本人は「床を拭く」と「黒板を拭く」ということを結びつけて考えていたようだが、そのラフモデルを見たときには、ただ単純な二つの似た行為の繋がりを具体化したものだけではない、何か不思議な魅力の要素を含んでいたことに作者も私も気付いてきた。そのえも言われぬ不思議な感覚は「ソックス」という具体が持つ要素だった。作者には、ただ単に何かのかたちや要素を靴下のかたちに置き換えるのでは面白くない、ということを繰り返し伝えた。そのうちに本人は靴下と日常の見逃してしまいそうな接点を見つけようとしはじめた。靴下の穴とか、階段の先を上がる人の足の裏や細部のようなことである。誰もがいわれてみれば納得できるような細かな気付きがこの「ソックス」のプロジェクトには詰まっている。気付いていることを自覚することは易しくない。考え込まず、まずは手を動かしてつくってみてから気付く、その繰り返しが靴下というメディアを理解する大きなきっかけになっている。考えるのではない、日頃感じとっていたことがなんだったかを反芻するのだ。
この制作はその努力の成果だと思う。つくってみることで自分を作品から離し客観視できるようになる。その体験がこの優秀な結果を生んだと言って間違いない。
(担当教員 深澤直人)

料理の結晶
中西 洋子

この研究は、食材を見ること、例えば、薄く切った牛肉についての味覚や嗅覚をひとまず保留して、純粋に色と形を通して見ることから出発した。最終的には、「結晶」というアイコンで、50の料理の視覚をつくることに成功した。その結晶は、食材から構成される料理のダイアグラムにもなっていて美しい。また、ディスプレイ、新しい料理、お菓子など、多くの応用を想像することができる愉しいデザインである。
(担当教員 小林昭世)