基礎デザイン学科

science of design

和菓詩
並木 梢

和菓子とテーマ自体は平凡であるが、日常の人々が共有している事象やイメージから菓子のかたちを導きだしていることが興味深く、卓越している。「受験勉強」という名と単語帳の赤い表紙のような飴の重なりがいい。「プール開き」という名の濃いブルーの線と淡いブルーのゼリーが重なった四角い菓子もいい。和菓子自体がその名を聞いてその形と頭の中で人々が共有してたイメージが重なるという、繋がり難い二者を繋ぎ合わせる妙が絶妙なアートとして昇華されている。つくる前に描かれた日本画的な淡いスケッチも美しい。和菓子の名は俳句の季語のようなものである。「言われればそう見える」という曖昧な繋がりが共有という美学を成している。この作品は季語というだけではない日常の共通項を抽象の菓子としてのかたちにまとめあげたことに大きな価値がある。
(担当教員 深澤直人)

Ex-formation 半熟
縫い包み
山本 勝也

「札束のぬいぐるみ」である。単にかわいいとか愛らしいということではなく「ぬいぐるみ」が持っている興味深い批評性に立ち入って、これを分析しようという真摯な態度がこの研究の裏にある。前半の多くの時間を費やしぬいぐるみの資料を集めていたが、その中でひときわ目を引いたのが「カエルの解剖」や「ネズミの解剖」などの、解剖の様子を再現したぬいぐるみであった。引っ張られた皮膚の感じや、柔らかな内蔵の感じが実に巧みかつリアルに、そしてユーモラスに再現されていて驚いた。柔らかくやさしい毛糸を用い、形をおおらかにデフォルメしながらも、対象の本質をとらえている。ぬいぐるみの表現は「笑い」を介して成就するが、怜悧なコミュニケーションがそこにある。山本勝也はその仕組みを冷静に観察し、具体的な対象物に適用してみせた。観察からルールを抽出し、それを的確に運用してみせる手際が鮮やかである。
(担当教員 原研哉)

植物を生ける
山川 理佳子

花は花器に生けられるのが普通であるが、コンクリートの割れ目から小さな線が伸び、それが小さな花をつける景色を日常生活の中に見ることがある。花と植物の生態では、石垣のすき間、雨どいなどいろいろな所に花と植物を見ることができる。この制作では、植物と植物のある場所をフィクションの世界まで想像を拡張して、植物とそれのある場所の物語を作っている。
(担当教員 深澤直人 / 解説文 小林昭世)