和菓詩
並木 梢
和菓子とテーマ自体は平凡であるが、日常の人々が共有している事象やイメージから菓子のかたちを導きだしていることが興味深く、卓越している。「受験勉強」という名と単語帳の赤い表紙のような飴の重なりがいい。「プール開き」という名の濃いブルーの線と淡いブルーのゼリーが重なった四角い菓子もいい。和菓子自体がその名を聞いてその形と頭の中で人々が共有してたイメージが重なるという、繋がり難い二者を繋ぎ合わせる妙が絶妙なアートとして昇華されている。つくる前に描かれた日本画的な淡いスケッチも美しい。和菓子の名は俳句の季語のようなものである。「言われればそう見える」という曖昧な繋がりが共有という美学を成している。この作品は季語というだけではない日常の共通項を抽象の菓子としてのかたちにまとめあげたことに大きな価値がある。
(担当教員 深澤直人)